マーガリンは工業的に作られていて、そのせいでトランス脂肪酸が入っていて体に悪い!トランス脂肪酸は危険だ!と騒がれていた。その流れで、マーガリンは体に悪いからバターを!なんて言ってるネット情報だったり、「トランス脂肪酸は食べるプラスチック?」と書かれた書籍も…。ただこれらはエビデンスはなく、著者の体感・感想がほとんど。 バターはバターで、動物性の油脂類のために動脈硬化を進ませると言われる。はてさて、バターとマーガリン、どちらが健康に悪いのか?

マーガリンは植物性脂肪だからいい?どうもそれは間違い
かつては、植物性脂肪から作られているマーガリンは、動物性脂肪であるバターよりも健康に良い印象を持たれていた。バターに比べ安価であることから、バターの代用品としてパンやケーキ、クッキー、アイスクリーム、チョコレートなど、現在多くの市販食品の原材料にも。 しかし近年、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸は、ガンや心臓疾患などの現代病や、喘息やアトピー性皮膚炎などとの関係も示唆されていて、多量に摂取すると、高齢者の認知症の発症率の増加と相関関係があることも、アメリカでの調査研究結果などから明らかになっている。
トランス脂肪酸とは
トランス脂肪酸とは不飽和脂肪酸の一種(二重結合を持つ脂質)。不飽和結合している炭素原子の末端の、炭素鎖とカルボキシル基のつき方でシス型とトランス型と変わる。 このシス型脂肪酸は天然に存在しており、トランス型脂肪酸は工業的に生成された加工油脂に多く含まれる。 トランス型脂肪酸は不飽和脂肪酸にも関わらず飽和脂肪酸のような影響を人体に与える。いわゆる脂質異常症を引き起こすため、トランス脂肪酸は身体に悪いという説になっている。
マーガリンは人工的なトランス脂肪酸なのでダメ?
バターはマーガリンと違い、自然界に存在する脂肪を使って作られている。バターにもトランス脂肪酸は含まれるが、天然のトランス脂肪酸である。一方のマーガリンは、植物性脂肪に水素を添加することで生成される。自然界に存在する脂肪に比べて人工的に作られた脂肪はリスクが高いと叫ぶその気持ちは分からないでもないが、このブログで何度も出てくるように天然物と化合物の境はグレーで、逆の話しになってることも多々ある。イメージだけでなく科学的な実証が必要である。
トランス脂肪酸と飽和脂肪酸の比較
ここで問題なのが、マーガリンをバターに変えた場合、飽和脂肪酸の摂取量が増えてしまうということ。どちらが身体に有害でないか(≒健康に良いか)を検討するにはそれぞれの影響の大きさと普段の摂取量が重要だ。 トランス脂肪酸と飽和脂肪酸の摂取量による冠動脈疾患への影響の大きさを比較した論文がある。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3024842/pdf/bfsn50-29.pdf 「LDLコレステロール÷HDLコレステロール」がどれくらい上昇するかで見た場合、およそトランス型脂肪酸は二倍くらいの影響力がありそうだ。「LDLコレステロール÷HDLコレステロール」がどれくらい上昇するかで見た場合、およそトランス型脂肪酸は二倍くらいの影響力があると言える。 農林水産省によると日本人1日あたり摂取量。 ・トランス脂肪酸 0.9g(/day) ・飽和脂肪酸 19g(/day) これらデータから、まず取り組むべきは不飽和脂肪酸の摂取量を抑えることだと分かる。平均的な食生活の日本人がトランス脂肪酸の摂取量を1g減らすことはほぼ不可能(摂取量は平均0.9g)だが、(同等の健康改善効果の期待できる)飽和脂肪酸の摂取量を2g程度減らすことは比較的容易だ。 実際の影響力よりも、恐怖感から大きく見積もり過ぎて結果的に不利益な選択をしてしまう事をドレッド・リスク効果と言う。(911の後、飛行機より車移動を選んで交通事故の死亡者数が増えた例が有名)。トランス脂肪酸も、カタカナの響きやマスコミの報道の仕方がドレッド・リスク効果を生んでいるのではないだろうか
バターとマーガリンの比較
マーガリン100gに含まれるトランス型脂肪酸は4-10g(商品によって異なります) バター100gに含まれる飽和脂肪酸は50g前後(こちらも商品によって異なります)
例えばパンを食べる時同じ量のバターとマーガリンを塗ると明らかにバターの方がコレステロール値を悪化させてしまう。それによる心血管イベントが増えることが問題で、ちなみに、食パンや菓子パン、ケーキなどには大量のバターが使われている。
脂質異常症のある方への説明として主食はパンより米(できれば玄米)や蕎麦を勧めているのはパンに含まれるバターのためだ。ここまでは健康寿命ではなくコレステロール値で健康への影響をみていた。こういった方法をサロゲートマーカー・代用マーカーといい医学ではよく使われる手法。
本当に健康寿命が終わるまで≒死ぬまで調査すると時間がかかりすぎて、有用な知見を提供するまでに時間がかかりすぎるのを避けるために使われている。とはいえ、直接死亡率を見ていないので信用しづらい!と異論を唱える人もいよう。では死亡率を見た研究を紹介する。
実際、飽和脂肪酸の摂取量が多く心血管イベントの多かったフィンランドにおいてバターをマーガリンに変え、牛乳を低脂肪乳に変えるという取り組みをしたところ心筋梗塞死亡率が下がったという有名な研究がある。。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2807690 国単位で取り組んで死亡率が下がったなんてすごい話だ。
バターとマーガリン、どっちが健康に悪いの?(まとめ)
データからもマーガリンの方が健康への悪い影響が小さいという結果に。 実際に、フィンランドでは国策として取り組んでバターをマーガリンに置き換えて心筋梗塞が減り、健康寿命が伸びた。 最近はトランス型脂肪酸が非常に少ない(0.2-0.3%)マーガリンも出ている。 ところで! 科学的な考察を行う際にも、『ドレッド・リスク効果』『代用マーカーという手法』がどうしても入る。シンプルに言えば、バイアスのかかった考察をしようとすれば結論をそのようにも導けるわけで…どちらかを排他したり、早急に結論づけたりすることは一番ダメだと思う。ストレスをよびおこし健康に一番悪いとも(^^; バターは味にコクがあって美味しい。パンを食べる時、その成分や体への負担を気にしすぎるのではなく(今回はマーガリンの方が総合的には健康的と分かった)気分や使い方でバター、マーガリン、オリーブオイルを気分で使い分ける(オリーブオイルは美味しい上に健康にもよく一番良いのだろう)のがオススメと締めくくる。
大手町の内科クリニックによるコラム(リーレクリニック大手町)など、複数のウェブ掲載情報からの引用あり
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