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化学物質ホラー話、正しいのはどっち?

相対性理論、その中身はよく分からないけど正しい。だからスマホが使える。 そんなスタンダードにはならず、論争のある化学はどうか? 「アルツハイマー(AD)病の原因はアルミニウムだ」の賛否両論を振り返ることで導きだされる教訓について考察してみる。 アルミニウム主犯説 ————————————- 『くらしの中の化学物質汚染(河野修一郎)』2001年6月発行 1945年生まれ。鹿児島大学工学部卒用。20年間の化学食品会社勤務を経て文筆に専念。現在、飽食の日本列島を襲う家畜と人の奇病をテーマにした長編を執筆中。ほか著者多数 ————————————-

アルミニウムが脳内から多く発見される2つの疾患がある。1つは筋萎縮性側索硬化症、もう1つがアルツハイマー病。 東京大学原子力総合センターの小林紘一、東京大学医学部理学部らの共同研究「アイソトーブ・ニュース 1991年6月」 ラットの腹腔ないに放射性アルミニウムを注射、5日後、10日後と経時的に35日後まで肝臓、血液、脳内のアルミニウムの存在量を検査。結果、血液脳関門があるにもかかわらず5日イナイにアルミニウムが脳に侵入すること、その量は肝臓で処理されるアルミニウムの1000分の1、ないし1万分の1という大量のものであることが判明。その後、脳内のアルミニウムは35日程度では排出されないかそのまま蓄積される可能性を示した。この研究では、健康な人間の脳にもアルミニウムが取り込まれ、それが蓄積することがあると結論している。つまりアルミニウムが原因でこれらの病気が発症する可能性が考えられるとしている。

アルミニウムは主犯ではない説 ————————————- 『化学物質、恵みと誤解(ジョン・エムズリー)』2005年7月発行 1965年より20年以上ロンドン大学化学科で有機化学の研究・教育にあたったのち、ロンドン・インペリアルカレッジ続いてケンブリッジ大学化学科の常勤化学ライターとなる。テレビの科学番組製作、『ニューサイエンティスト』誌コラムニストなどとして科学の啓発普及に活躍中。1993年にGlaxo賞、1995年に『逆説・化学物質』でローヌプーラン科学書賞、2003年にドイツ化学学会著作者賞を受賞。 ————————————-

1960年代、透析をうける患者が痴ほう症状を示した。透析装置から溶けだして患者の血液に入ったアルミニウムが原因だった。ちょうどその頃、イギリスニューカッスルの研究者が、痴呆になって死亡した患者の脳組織に高濃度のアルミニウムを検出。またウサギやネコにアルミニウム塩を注射したら、脳内に繊維状の沈着物ができた。 だがアルミニウムはアルツハイマー患者の脳にできるような繊維質やアミロイド老人斑はつくらないし、ウサギとネコの繊維質は脳以外の部位の神経系にもできる。どうやらアルミニウムの解毒反応として繊維質が生じたらしっく、人間でもアルミニウムを追いだす薬を投与したら透析による痴ほうは改善した。そんな風に透析痴ほうとアルツハイマーは違う。しかしADで死んだ患者を誰かがしらべアルミニウムが多いと報告、ならばADの原因もアルミニウムに違いないというわけで主犯説がうまれ、さかんに喧伝された。史上、アルミニウムに人間が倒れた証拠はゼロなのに宗教じみた大キャンペーンが沸き、あらゆる汚染源を根絶しようとした。 ケンブリッジ大学の精神科の名誉教授でADの専門医だったマーティン・ロスはアルミニウム説を信用せず、マスコミ発言もしたが当時は孤立無援だった。いろんな人がアルミニウムとの戦いに立ち上がる。 (こんな状況を知っているか。) アルミニウムは身近にあふれる金属 アルミニウム缶やホイルの姿をもつ、化合物のミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム)は何世紀も染色や止血(ひげそり傷へなど)に使ってきた。汗止め効果の高い塩基性塩化アルミニウムは化粧品に入れてある。硫酸アルミニウムは浄水に、水酸化アルミニウムは消火剤の使う。とにかく何世紀もアルミニウムを使い続けてきた。 殻ナイの量でアルミニウムは酸素、ケイ素に次ぐ3位を占める。金属では一番多い。 少量にアルミニウムは河川水に入って海までいく、そして水酸化物の沈殿をつくっている。 土壌が酸性化してphが4.5を切ればアルミニウムもわずかに溶け、植物が吸うと根の生育やリン酸の吸収に障害が出る。 食品添加物にもある、ケーキを銀でおおう金属アルミニウム、乳化剤につかうリン酸ナトリウムアルミニウムほか全部で4つある。 消火剤や胃潰瘍の薬、十二指腸潰瘍の薬にも水酸化アルミニウムを含むものが多い。アルミニウム主犯説が正しいならそれら薬を飲む人はAD発症率が高そうなところそんな証拠はない。 1世紀以上、飲み水の上かにも硫酸アルミニウムを使ってきた。残留アルミニウムは1Lあたり多くて0.2mgしかないし、平均的な人が飲み水から一日にとるアルミニウム摂取総量5mgの1%にも満たない0.03mgである。 (アルミニウムの働きはどうか。) 土壌のアルミニウムはたいていの植物体に入る。お茶の木や吸収量が多いのでお茶好きはお茶からアルミニウムをずいぶんとる。 ほうれん草、レタス、たまねぎ、じゃがいもにもアルミニウムは多い。 日に5~10mgのアルミニウムを摂取はしても吸水分は0.01%もない。食品中のケイ酸イオンやフッ化物イオン、リン酸イオンが不溶性の塩をつくるからだ。水にとけた成分も腸壁からはほとんど吸収できないため、血中濃度はppmに届かない。入った分も腎臓が排泄するので体がアルミニウムにやられる状況は起こりようがない。 (反アルミニウム運動は1990年ごろに絶頂期を迎え、いきなり消えた) ADで死亡した人の脳を先端技術で分析したらアルミニウムはゼロだった。分析は1992年にオックスフォードで、19999年にはシンガポールで繰り返された。結果をフランク・ワットたちが『ネイチャー誌』に書き、以後の追試でも確認される。わっと氏の結論「…以前の報告と同じく今回の結果もアルミニウムをADの原因と考える根拠はないことを示した。過去の研究は処理後の脳組織を用い、老人斑と繊維状沈着物にアルミニウムを検出したが、汚染または元素の再分布がその原因だろう。」 2000年、40日間にわたって水酸化アルミニウムを大量摂取させたボランティア集団の尿を分析した。アルミニウムの吸収・排泄速度は対照群の10~20倍にもなったけれど、それが免疫系に影響した証拠は何ひとつなし。つまり人体は、ずいぶん大量のアルミニウムも受け入れる。アルミニウムは自然界にたっぷりあるからあたりまえの結論だった。 英国民がホラー話をようやく忘れたのは1998年ごろ。水道局も硫酸アルミニウムを昔どおり使いようになった、一度は硫酸鉄に切り替えた浄水場も硫酸アルミニウムに戻した。料理番組でアルミのフライパンとソース鍋をすすめたら売上が急上昇した。

以上が2つの書籍(2人の著作者)の論である。 「主犯でない説」に肩入れしたわけではない、どちらも要約はしたが割かれた紙面の量でまず、上記の要約の量のような差があった。 「主犯説」の根拠となる研究結果は1991年6月のもの。一方、「主犯でない説」の方は1992年、1999年、2000年に行われた研究や実験結果を披露。合わせてアルミニウムの性質やその働き、人間生活とのかかわり方を詳しく説明している。 アルミニウムが普通に自然の植物や川や海に存在し、生活用品にも使われている実態をしらないと「自然世界になかった危険な化学物質の金属が病気の根源で、それはなに者かの悪意によってもたらされた害だ」と思ってしまっても不思議ではない。あ、周辺情報って大事だよな~って話しです(^^; ある権威ある人が言ってたら、メディアで報道されたらそれは正しい、と。今の僕みたくよっぽどでないと自分で難しい化学を調べようと思わないだろうし…なのでその論を覆そうとすれば(正義を取り返そうとすると)、膨大な調査や粘り強い説得が必要となる。するとこの誌面の量の違いになるんだと思う。お疲れさまです(^^; ただ、この2つを読み比べたとき、「主犯でない説」を支持するだろう。 というか、今はその世論になっているからイギリスの水道局では硫酸アルミニウムを昔どおりに使うようになったわけだが、この1つのテーマの正義を取り戻すため約30年の時間がかかったし、多くの企業がその辛酸をなめた。(あらゆる化学物質の安全性を確認するのが産業界の義務。巨費が飛び、無数の実験動物が殺されて化学産業にも打撃を与えた。)いや~お疲れさまです(^^; 今日の金ちゃんの目からウロコがぽろっ

  1. 巨大なメディア…ひたすらニュースを求める姿勢、センセーショナルな話題を取り上げる姿勢がある

  2. 活動団体…「まず結論ありき」で何かを証明したいと願ってて、ずさんな調査を発表、大騒ぎしがち

  3. 化学物質のイメージ…いつも非難の的だった。けど無ければこんな文明、そして長生きもしていない

  4. 科学的発見の落とし穴…サイエンスの裏打ちが無いものも多い、データのずさんな収集・処理・発表が生んだ幻が多い

  5. 調査の落とし穴…3つの落とし穴「データの選択」「データ処理」「隠れた因子」がいろんな形でエラーを生む

  6. 研究者の事情…そこそこの(?)論文を書いてそこそこの認知を得られれば研究費を獲得できる

  7. 受け身の世間…自分でわざに調べない、何かの発表を見ると科学的証拠があったに違いないと思ってしまう

  8. 感情論…どれも試験で安全だとわかっているのに、長期作用を調べた結果はないから全て禁止せよという

長すぎるよね、はい、すみませんm(__)m 最後のところ補足して終わる。 何かが完璧に安全だと証明する手段はない。それは被告が自分の無罪を証明することと同じだ。誰かが「あぶない」と叫んだ「化学物質」が悪いと考えるのはやめ、叫んだ人に有罪証明を要求すること。かつて多くの有用物質に罪を負わせた「憶測」はやめよう。でないと自分が魔女狩りの一員になってしまいますから(^^;

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