酸素分子O²より酸素の原子が多くてお得なのに呼吸に使えないのはなぜ?の疑問。 何十年前までは「健康のため、自然の中に出かけてオゾンを胸いっぱい吸いましょう」なんて話しもあったが、生き物にとってオゾンは猛毒だ。見かけは似ていても分子がちがえば性質もまるで違ってくる。
オゾンの毒性
オゾンは濃度により、人体への悪影響を及ぼすことが確認されている。 日本産業衛生学会では作業環境基準としての許容濃度を0.1ppm(0.2 mg/m3)と定めており、人体への影響としては以下の指標を公表している。 0.01~0.02 ppm(一億分の1の密度):オゾンの臭気を感じる 0.1 ppm~:鼻、のどへの刺激 0.2~0.5 ppm:視力の低下 0.4~0.5 ppm:上部気道への刺激の感知 0.6~0.8 ppm:胸痛感知、咳 1~2 ppm(百万分の1の密度):疲労感・頭痛・頭重の感知、呼吸機能の変化 5~10 ppm(十万分の1の密度):呼吸困難、脈拍増加、 50 ppm~(2万分の1の密度):生命の危険が起こる しかしながらオゾン自体は、低濃度で自然界にも存在する物質であるし、また数時間で酸素に戻り、残留性の心配もない。酸素に放電を与えて生成されたものはその濃度さえ管理すれば、安全性の高い物質ともいえる。 ————————————-
オゾンの働きを有効に使った例
化学変化して姿を変える
例えば 一酸化炭素COは命にかかわる毒なのに、酸素がもう一個ついた二酸化炭素CO²は毒じゃない。安全な水H²Oだって、酸素原子がもう1個増えた過酸化水素H²O²になると、輸送中に爆発することもあるし、水に溶かせば殺菌用のオキシフル(3%水溶液が殺菌、消毒液のオキシドール)だ。食塩の塩化物イオンCl⁻と、猛毒の塩素Cl²もそんな関係にある。 毒になったり爆発したりするのは、その分子がもっと安定な形に変わろうとする、つまり化学変化しやすいということ。過酸化水素は酸素になりたがるし、塩素も塩化物イオンになりたがる。 オゾンは分解して酸素になりたがる。 ただ、酸素だけなら良いが、オゾン分子が化学変化すると酸素原子Oもできる。酸素原子というのはそのままではすごく不安定だから、そばにいる物質に手当たりしだい襲いかかる。オゾンを吸うと体の中でそれが起きて、酸素原子がまわりに物質に襲いかかるので呼吸などには使えない。 動物に危なければもちろん植物にも危ない。世界のあちこちで森が枯れているという話、ひところは酸性雨が原因と言われたが、1993年頃にオゾンが主犯らしいと分かった。大元は車の排ガスで、排ガスに含まれる窒素酸化物は空気中で化学変化しオゾンをつくり、そのオゾンを吸った植物が枯れてしまう。
オゾンは生き物の守り神
オゾンが無くなると困るという話しもある。
身近な大気中のオゾンは悪玉だが、上空はるか成層圏にいるオゾンは善玉だ。20~40キロ上空にあるオゾンは、地上に積もらせればたったの3ミリしかないんだけども、太陽の紫外線をビシッっと吸収してくれる。その紫外線は生き物の遺伝子DNAを壊してガンを起こしたりするから、成層圏のオゾンは生き物の守り神だと言える。
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